農地を持っている方のなかには、「農地で太陽光発電はできるの?」「ソーラーシェアリングってどういう仕組み?」と気になっている方もいるのではないでしょうか。
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)は、農業を続けながら太陽光発電も行う一石二鳥の仕組みです。農林水産省が2013年に制度化して以来、全国で導入が広がっています。この記事では、ソーラーシェアリングの仕組みから許可申請の方法、メリット・デメリットまで詳しく解説します。

ソーラーシェアリングとは
ソーラーシェアリングとは、農地に高さ3m程度の支柱を立ててその上に太陽光パネルを設置し、パネルの下で農業を行いながら、上で発電する方式のことです。正式名称は「営農型太陽光発電」と呼ばれています。
パネルの間隔を適度に空けることで、農作物にも十分な光が届く設計になっています。農林水産省の2013年3月の通知により、一定条件のもとで農地転用の一時許可を取得して実施できるようになりました。
通常の太陽光発電との違い
| 項目 | 通常の太陽光発電 | ソーラーシェアリング |
|---|---|---|
| 土地利用 | 発電専用 | 農業と発電を両立 |
| 農地転用 | 完全転用(農地でなくなる) | 一時転用許可(農地のまま) |
| 営農義務 | なし | あり(収量8割以上維持) |
| 許可期間 | – | 原則3年(条件により10年に延長可) |

許可申請の流れ
ソーラーシェアリングを始めるには、農地の一時転用許可を取得する必要があります。具体的な流れは以下のとおりです。
- 営農計画の作成:どんな作物を育てるか、収量の見込みなどを計画する
- 設備計画の作成:パネルの配置、支柱の高さ、間隔などを設計する
- 農業委員会への申請:市町村の農業委員会に一時転用許可を申請する
- FIT認定申請:経済産業省にFIT(固定価格買取制度)の認定を申請する
- 電力会社との系統連系手続き:売電のための接続契約を結ぶ
- 施工・設置:パネル・支柱の設置工事を行う
- 営農開始・発電開始:農業と発電を同時にスタートする
令和6年4月にガイドラインが改正され、一定の条件を満たせば一時転用許可期間が10年に延長されるようになりました。これにより、長期的な事業計画が立てやすくなっています。
申請から許可が下りるまでには通常2〜3か月程度かかります。農業委員会の定例会議のスケジュールに合わせて審議されるため、余裕をもって準備を進めることが大切です。
営農継続の条件
ソーラーシェアリングでは、以下の営農継続条件を満たす必要があります。満たせない場合は許可取消・パネル撤去義務が発生します。
- 農作物の収量が周辺農地の概ね8割以上を維持すること
- 農地の適正な利用(荒廃させない)を継続すること
- 毎年、営農状況の報告を農業委員会に提出すること
この「8割基準」は非常に重要で、パネル設置後の遮光率を適切に管理しなければなりません。栽培する作物の種類や地域の気候条件に合わせて、パネルの間隔や角度を専門家と相談しながら設計することが成功のカギとなります。
適した農作物
パネルの下は日照量が減るため、半日陰でも育つ作物が適しています。
ソーラーシェアリングに適した作物
- 葉物野菜:小松菜、ほうれん草、レタスなど
- 根菜類:じゃがいも、里芋、大根など
- ネギ・玉ねぎ
- ナス・ピーマン
- お茶
- 薬草・ハーブ
- 榊(さかき)
- キノコ類
逆に、強い日射を必要とする稲作・トマト・スイカなどはパネル下での栽培には不向きで、収量低下のリスクが大きくなります。ただし、稲作についても遮光率を適切にコントロールすることで成功している事例もあり、地域の気候や品種選定によっては挑戦の余地があります。
収益シミュレーション
ソーラーシェアリングの収益を具体的に見てみましょう。50kW規模の設備を想定した場合のシミュレーションです。
| 項目 | 金額(年間) |
|---|---|
| 売電収入(50kW・設備利用率13%) | 約56万円 |
| 農業収入 | 従来通り |
| メンテナンス費用 | 約10万〜20万円 |
| 発電による純収益 | 約36万〜46万円 |
農業収入に加えて年間30万〜40万円以上の売電収入が上乗せされるイメージです。初期投資の回収には10〜15年程度かかりますが、FITの買取期間が20年のため、回収後は安定した副収入源になります。

FIT制度での売電
ソーラーシェアリングは地上設置型に分類され、2026年度のFIT買取価格は9.9円/kWh・買取期間20年です。地域活用要件として自家消費率30%以上と災害時活用体制が求められます。
10kW以上50kW未満の低圧案件では、自家消費と売電を組み合わせた運用が基本です。発電した電力を農業用の設備(ハウスの換気、灌漑ポンプなど)に使う形も増えています。
導入事例から学ぶポイント
ソーラーシェアリングは全国で導入が進んでおり、特に千葉県匝瑳市の事例は先駆的な取り組みとして知られています。農林水産省の調査によると、営農型太陽光発電の導入件数は年々増加傾向にあり、全国で3,000件以上の実績があります。
成功事例に共通するポイントは、地域の農業委員会や農業普及指導センターと密に連携していることです。パネル設置後の営農計画について事前にしっかりと協議し、収量維持の見通しを共有しておくことで、許可更新もスムーズに進みます。
メリットとデメリット
メリット
- 農業収入+売電収入の二重の収入源が得られる
- 農地を転用せずに活用できる
- パネルが日よけとなり、夏場の農作業環境が改善される
- 高温障害を受けやすい作物の保護になる場合がある
- 20年間のFIT買取で安定収入が見込める
- 耕作放棄地の有効活用策としても注目されている
デメリット
- 設備投資費用がかかる(10kW規模で300万〜500万円程度)
- 営農義務があり、農業をやめることはできない
- 収量8割維持の条件を満たす必要がある
- 許可更新手続きの手間がかかる
- パネルの影響で作物選びに制約がある
- 大型農機の使用が制限される場合がある(支柱の間隔に注意)
よくある質問(Q&A)
Q. 農業経験がなくても始められますか?
ソーラーシェアリングは営農が前提の制度なので、農業経験がまったくない場合はハードルが高いです。ただし、地域の農業法人と連携して営農部分を委託するケースもあります。農業委員会に相談してみてください。
Q. 耕作放棄地でもソーラーシェアリングはできますか?
耕作放棄地でも、営農を再開する計画があれば申請は可能です。ただし、荒れた農地の復旧費用がかかる場合があります。むしろ耕作放棄地の有効活用策として注目されている面もあります。
Q. 一時転用許可が更新されなかったらどうなりますか?
許可が更新されない場合は、パネルの撤去義務が発生します。そのため、営農条件を着実に満たしていくことが重要です。撤去費用も事前に想定しておく必要があります。
Q. ソーラーシェアリングの設置費用はいくらですか?
10kW規模で300万〜500万円程度が目安です。通常の地上設置型よりも支柱が高く特殊な架台が必要なため、やや割高になります。ただし、農業補助金と組み合わせることで費用を抑えられるケースもあります。
Q. 台風や大雪でパネルが壊れた場合はどうなりますか?
自然災害によるパネルの破損リスクはあります。火災保険や動産総合保険に加入しておくことで修理費用をカバーできます。また、支柱やパネルの設計段階で、地域の風速や積雪量に耐えられる強度を確保しておくことが大切です。
まとめ
ソーラーシェアリングは、農業と太陽光発電を両立させる画期的な仕組みです。農地を活かしながら売電収入を得られるため、農家の新たな収入源として全国で導入が進んでいます。
ただし、営農義務の遵守や許可申請の手続きなど、通常の太陽光発電にはないハードルもあります。導入を検討する際は、お住まいの地域の農業委員会や、ソーラーシェアリングの実績がある施工業者に相談してみてください。
参考:農林水産省「営農型太陽光発電について」、splight「ソーラーシェアリング完全ガイド」、アースコム「ソーラーシェアリングの農地転用許可」



